読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

グループホームさいかい香椎の日記

福岡県福岡市の精神・知的障がい者向けグループホーム「さいかい香椎」のブログです

「オープンダイアローグ」は日本になじむか?

対話は手段ではない。

それ自体が目的である。

治癒は副産物としてやってくる。

 

「オープンダイアローグ」

フィンランドで始まった

「開かれた対話」

新しい精神治療の考え方です。

本人を取り巻くあらゆる専門家

家族、そして何より本人が一緒に集まって

すべての人が対等な立場で専門的な意見をぶつけあう

病気について、問題解決の道筋、これからの人生の組み立て

あらゆることを相談・対話するのだと言います

 

日本では

本人のいないところで

ケア会議、支援会議として関係者が集まるのがほとんどで

医師が参加してくれることは非常にまれです。

多くの場合、医師と患者は対等にはなれず

病気のことを語るときに、

医療と福祉も対等とは言えない

こういう治療方針でいこうと言われれば

それにしたがうことになりがちです。

明確な治療方針を伝えてもらえることも少ないでしょう。

ましてや統合失調症の人なら

不安や幻聴や、意志薄弱・・・さまざまな要因で

こうしようと決めてもすぐに撤回したりと

医師や周囲を困惑させてしまうこともたびたびあります

そこで、ついつい本人をはずして概要を決めてから

本人に伝えるということをやりがちです。

最近では、本人を参加させようという動きはありますが

ある程度方針を持って、事前の調整ありきで

本人の「納得」を得る場という位置づけが多いと思います

 

日本のケア会議は建設的な意見のみならず

支援者たちが愚痴をこぼす場にもなりがちですから

本人のいないところでやってしまおう

そういう空気になってしまいます

 

そこに

「オープンダイアローグ」

参加者すべてが対等で

その場で結論を求めることなく

ただそれぞれの意見をぶつけあう

対話を先導、誘導する人間はおらず

議論がスムーズに進むように会話に介入する

ファシリテーターがいるだけで

相互理解に向けて議論を広げたり深めたりする

役割を担います

この場の目的は

それぞれの異なった理解をうまくつなぎ合わせ

共有することです。

合意や結論はこの過程から出る副産物として

もたらされるのです。

 

家族は家族

本人は本人

1個1個やっつけようとする感覚に近いかもしれません

しかし、それでは

家族が何に悩み、本人が何を苦しみ

支援者が何を伝えたいのか

なかなか伝わらない

伝わったとしても、どこか素気なく

うわの空ということになりがちで

本当の意味では伝わっていない(響いていない)

のではないかと思わざるを得ません

 

精神疾患の治癒には

本人の病識が不可欠です

昨今では「外在化」をキーワードに

病気と向き合うことを求めます

ところが、実際にそれが出来る人はごくわずか

薬物療法中心の治療の中では

統合失調症に至っては7割を越える人が

再発してしまいます

 

オープンダイアローグでは

統合失調症患者の再発率は2割程度

まさに奇跡の治療法とも呼ぶべき数字です

自らの病気のこと、治療法、人生のこと・・・

目の前で議論されるうちに

自然と「外在化」出来るのかもしれません

ファシリテーターがうまくその場を回し

家族や支援者などの話を適度に引き出すことで

自分の噂話を目の前でされている状況に近くなるそうで

そりゃあ、いやでも耳に入ってきて

自分で考えなけりゃならないわけで

家族がどんなことで悩んでいるのかも

素直に響いてくるのかもしれません

 

では

この「オープンダイアローグ」が

日本で広まるためには何が必要なのか?

 

医療、福祉のスタッフの意識改革

だけのような気がします

 

医師は、大病院でどかんと椅子に座り

2週に1回。5分の診察で薬を出すような

今の診療方法を見直し

「現場」に足を向けるということ

制度的にはそれでも食べていける医療制度が必要です

福祉の側も本人とのかかわり、家族とのかかわりを見直し

ともすれば、家族との分離が支援や治療に役立つという考えも

ケースバイケースで見直していく必要があるでしょう

精神を病んでいる人に

ある意味、現実を突き付けるわけですから

わきまえなのかテクニックなのか、気遣いなのかは必要でしょう

重要とされるのはクライアントとの間の言葉のキャッチボール

クライアントの言葉をすべて受け止め、きちんと返す

クライアントの重要な訴えをスルーしない

これがなかなか難しい

果たして、今の日本の福祉現場で

これだけのことを実践できる人はどれだけいるでしょうか

 

もちろん、志して勉強に勉強を重ね

就職する人も多いですが

報酬の安さなどから

やりがい搾取などと言われ

優秀な人はどんどん転職していき

比較的想いの強い人だけが残る状況なのに

福祉は、いつしか

一般企業でうまくいかなかった人、

失業した人の受け皿としての機能を求められ

こと障がい者福祉の現場は

高齢者介護の現場でうまくいかなかった人の受け皿にもなり

実際のところ

想いの強い人とそうでない人の温度差は激しく

実動出来る人には限りがあり

正直マンパワーが不足しています

 

オープンダイアローグの日本導入には

かなりのハードルがあると感じています

 

しかし

今まで7割、8割が再発し

再発が当たり前と言われた精神疾患

再発率2割

8割もの人が職場や学校へ復帰している

そんな数字を目の当たりにすると

すぐにでも導入していきたくなります

 

想いがなくては出来ないが

想いだけでも難しい

 

しっかりと学び、理解して実践する

現状では、論文など読んでも正直難しいから

研修や事例検討などを通して

整理していくことになるのでしょうが

日々の業務に追われていてはなかなか難しい

 

それでも、

薬も減らせて、病院、病床も減らせるし

多くの人の利益になるなら

国をあげて取り組んでもいいのではないでしょうか?

 

「オープンダイアローグ」

精神医療の新しい波が日本に到達する日は

もう、すぐそこまで来ているのかもしれません。